チャノ・ドミンゲス

フラメンコ・ジャズのピアニスト、チャノ・ドミンゲスのインタビュー&ライブを聴きに、四谷のスペイン語学校セルバンテスへ出掛けてきました。

66年スペイン南部カディスの生まれのチャノは、舞台に立った姿は思ったより小柄。スペイン男らしくユーモアを忘れない軽妙な語り口で聴衆を飽きさせないインタビューとなりました。

6歳からギターに魅せられ、さいさんの神様への「お願い」の末、冗談好きなお父さんが用意したのはギターの形の箱。「ギターだ」とばかりに箱を開けてみると、生ハム1本(片足)だった、というゆかいな家族の逸話をはさみつつ、楽しい話がスタートしました。

8歳で念願のギターを手にし、教会の聖歌隊に加わりギターを弾くうちに次に魅せられたのは、教会のパイプオルガンだったとか。再びの「お願い」で16歳でオルガンを手に入れ、20歳でピアノへと移行したそうです。

地元カディスの通称「カイ」からとったバンド名「カイ」でデビュー。フラメンコかと思いきや、意外にもロックバンド。プログレッシブ系バンドというから驚きです。その後ニューヨークでJAZZに出会い、郷里の音楽フラメンコと通じるところを感じ、深くのめり込むことに。

チャノは、そんなJAZZとフラメンコの共通点を、「すべての感情を自由に表現できるところ」だと熱く語ります。たとえば、フラメンコの曲種「ソレア」を唱う「カンテ・ソレア」と、JAZZのジャンル「ブルース」の歌は、まさに同じものだとか。なるほどね〜。

ご自身の音楽ジャンルを「musica imprevisada」、つまり「即興音楽」と位置づけ、演奏の楽しみは時として現れる、魔法のようなひと時だとも。「スイングでも、ドゥエンデでも、言葉はどちらでもいいけれどね」なんてチャノのひと言に、「スイング」って意味はそういう意味まで包含するのか~なんて、ひとり興奮してしまいました。

ちなみに「スイング」はよくジャズで聞く言葉ですよね。そして「ドゥエンデ」はフラメンコの世界でいわれる「魔性」とか「神秘的なもの」といった、最上級の称賛を表す時に使われる言葉です。

スペイン歌謡「コプラ」をテーマにしたアルバムも作っているチャノですが、それについてのコメントも興味深かったのでここにちょこっと記しておきます。

スペイン歌謡「コプラ」のイメージは独裁制だったフランコ時代と重なり合うそうで、最近まであまり人気がなかったそうです。歌詞も強烈で、若い世代からは「じいさんばあさんの歌」というレッテルを貼られていたそうですが、96年に新しいテキストとともにリノベーションしてみると、「とても上手く行った」のだとか。「音楽はすたれてしまっても、そうやって何度でも甦る」。しみじみと語るその様子に、音楽そのものを、その価値ある存在を、とても愛している人なんだなあ、と感じました。

演奏はアンコールも合わせて7曲披露してくれました。

ジャズをベースに、クラシックありフラメンコありのバラエティーに富んだものでしたが、とても感動的だったのは、最後から2曲目、「ここに集まったすべての女性に」と贈られた、フラメンコの曲種「コロンビアーナ」でした。明るく華やかな楽曲自体が素晴らしかっただけでなく、チャノが叩く鍵盤からくりだされる音の数々に、脳をマッサージされているような快感を味わいました。

音の強弱や長さや、その他さまざまなものが、それぞれの波動で耳をくすぐり、脳の細胞に降り注ぐカンジです。まるで音のシャワー。小さなホールで聴く醍醐味とでもいうような、生音のパワーを存分に楽しむことができました。しかも無料。まさに新春お年玉企画でした♪