ホセ・ルイス・ゲリン映画祭

注目の監督ホセ・ルイス・ゲリンの映画祭に誘われ、バルセロナを舞台にしたドキュメンタリー映画『工事中』を観ました。
その視線とウィットに富んだセリフ、ありのままのバルセロナ・ラバル地区に驚かされました。

ラバル地区に隣接する、メルカード・サン・アントニオ地区に住んでいたことがあるのですが、当時、発表された都市開発の工事に、少なくともメルカード・サン・アントニオ地区の住民は期待をもったものです。
ゴシック地区からラバル地区を突っ切り、メルカード・サン・アントニオ地区に抜けるいくつかの通りは、一人歩きは危険だとされた通りでした。それでも歩き慣れたものたちにとっては、夜中も小さな窓を開けている角の薬屋から、アパートの上方から聴こえてくる痴話げんかまでもが、親しみ深い日常だったことを覚えています。
ラバル地区中央部の古いアパートを取り壊し、ホテルと広場を造り・・・と連日新聞を賑わす構想に、光が煌煌と灯るといったらよいか、単純に、明るい兆しを感じたものです。

ところが、映画『工事中』が、製作に3年の歳月をかけてじっくりとあぶり出したのは、排他的な、金拝主義的な「気配」でした。新しいラバルを見ることなく、その後まもなく私は帰国し、当時のバルセロナは転がるように、バブル景気に向かって突き進んでいたのです。

開発工事と並んで進められた映画の製作は。バルセロナ映画学校の申し出により、生徒が無償で参加することで、異例の時間をかけることができたそうです。
出演者はすべてラバル地区で出会った住民や工事の労働者たちなど素人の人たち。しかも台本はなく、実際の会話で構成されているそうです。

スペイン映画好きの友人の計らいで、監督講演付きの日に映画を見ることができ、「このような作品はそう撮れるものではない。私にとっても素晴らしい経験となった」という、聡明な上に魅力を備えた監督の生の声も聞くことができました。
きらびやかなエンターテーメントとは真逆の、地味なルポルタージュは、その後、片時も私の心を離れません。

ホセ・ルイス・ゲリン映画祭は、残すところわずか。
時間が合えばぜひほかの作品も観たいところです。
『工事中』以外は、フィクションらしい。
よい紹介記事があったので、リンクしておきます。

http://astand.asahi.com/magazine/wrculture/2012070600012.html?
iref=webronza

シアター・イメージフォーラムで上映中
http://movie.walkerplus.com/th124/

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