チェロ奏者上野通明さんの銀座シャネル演奏会

バルセロナでチェロの基礎を学んだ上野通明さんの演奏会が、5月7日土曜日に銀座シャネルでありました。演奏会は「シャネル・ピグマリオン・デイズ」と題された若きアーティストを支援する試み。才能あふれる若手演奏家を招いて、定期的に開催されている室内楽コンサートで、無料なんです。

演目は、バッハの『無伴奏チェロ組曲 第3番 ハ長調 BWV1009』、休憩を挟んでハンガリーの作曲家コーダイの『無伴奏チェロ・ソナタ 作品8』。そしてアンコールに黛敏郎の『文楽』というダイナミックな組み合わせでした。

20160507上野通明_チェロ

スペインが誇るチェロ奏者カザルスによって日の目を浴び、チェロのバイブル的存在となった『無伴奏チェロ組曲』ですが、プログラムによれば

『第3番 ハ長調』は、「ハ長調という明るい調性が基本とされる作品で、全楽章を通してハ長調で始まり、同調で完結する。前奏曲ではペダル・ポイント(持続音)が効果的に使われ、高い演奏技術が要求される

のだそうです。

コーダイの『無伴奏チェロ・ソナタ 作品8』(1915年)はチェロ独奏の名曲。プログラムではこのように紹介されています。

古典的なソナタ形式に則った3楽章構成ですが、調は明確に表記されておらず、チェロの超絶技巧によって民俗音楽(バグパイプやハープなど)を表現するなど、斬新な手法が特徴的です。チェリストにとって難曲といわれているこの曲ですが、その理由としてチェロのあらゆる発音方法の可能性を秘めており、「擦る」「はじく」「叩く」など多様な演奏技法が盛り込まれ、それぞれの要素が音楽として流れるように表現しなくてはならず、ともすると技巧に偏るがゆえに曲の輪郭を損なってしまう恐れもあるからです。

『無伴奏チェロ・ソナタ 作品8』の演奏前、「人前ではじめて演奏するので、」と上野さんははにかんでいましたが、始まってしまえば若々しさが花開くような「あらぶり」を感じさせる場面もあり、いままでの上野さんにない演奏も聴かせてもらえました。これがドイツ、デュッセルドルフ音楽大学の息吹なのでしょうか。昨年、見事に飛び級合格したディッセルドルフ音楽大学コンツェルトエグザメンコース。マイスターの指導や学友とのセッションなど、20歳の上野通明さんにとっての真新しい扉が次々に開かれる日々を過ごしているのかもしれませんね。

ドイツと日本の往復生活の間に行われる上野さんの演奏会ですが、アカデミックな素地と抜群の感性、新しい環境と指導の影響が着実に実を結んでいる、そんな気がします。音の彩りや表現法を増してゆく軌跡を、オンタイムに寄り添い体感できるなんて、こんな幸福ってあるのかしらとつくづく思います。

■CHANEL PYGMALION DAYS

※今回演奏された3曲についてとても分りやすく紹介しているブログがあったので、リンクしておきます。

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