映画「シルビアのいる街で」

スペイン人監督ホセ・ルイス・ゲリンの長編映画「シルビアのいる街で/Dans la ville de Sylvia」を観ました。2007年に製作され世界各国で話題になり、ゲリン監督の名を一躍有名にした作品です。日本でも2008年東京国際映画祭、その後2010年に劇場公開され、高い評価を集めています。

lasmusasyg

今回は最新作「ミューズ・アカデミー/LA ACADEMIA DE LAS MUSAS」の上映に伴った特別上映会。写真美術館の企画です。

長いこと観たかった映画「シルビアのいる街で」は素晴らしくよい映画でした。主人公が恋する女性を追い街中を歩き回るという、古典的ともいえるシナリオ。ところが、ゲリン監督が撮るとこうなるのね、と納得。

主人公は画家志望の青い瞳に揺れる長髪のイケメン。6年前に出会った女性シルビアを見つけ、フランス国境の(ストラスブールの)街中をどこまでも追いかけるのですが、しかしこれがスリリングでクール。美しい。路面電車が走る街中、落書きのある裏路地、いくつもの窓、道に座り込んでアルコールを飲むホームレスらしき老婆 etc.を背景に、近づいては離れ、離れては息さえかかるような距離に身をおくふたりを追うカメラワーク。周到に用意された小道具大道具に、見る者はドキドキハラハラしながら、いつの間にか、ゲリンの世界に引き込まれていきます。

この映画のもうひとつの魅力は音。路面電車や過ぎ去る自転車、無数のつぶやきなど交錯する暮らしの音。さまざまな音がふくらんだり、しぼんだりしながら、コンサートの始まる前のオーケストラの音合わせのようにやがてどこかに吸い込まれてゆく音響の試み。古典的な脚本と映画の手法をひとつひとつ丁寧に洗い直し「解釈」を加えた、興奮を覚えるような映画にできあがっていました。

印象的だったシーンがあります。さまざまな会話が流れるカフェテラスと、若者が踊り酔う安酒場のクラブのシーン。ごくごくありきたりの風景の中、透き通る青い瞳が見つめるのは、さまざまな女性たちの表情。スケッチブックに刻まれる素描も、鉛筆の走るサラサラという音も、とても心地よいのです。みずみずしい叙情性が全編を通して満ちている、そんな作品でした。

「シルビアのいる街で」は古き良き映画へのオマージュであり、女性全般へのオマージュか?と思い至ったところで、同監督の最新作の「ミューズ・アカデミー」という大胆なタイトルが頭をかすめました。なんとなーくではありますが、ゲリン監督の嗜好というか思考というかが腑に落ちた気がします。

映画が終わり、場内が明るくなると、30~40代とおぼしき男性が多数いることにびっくり。映像関係者と思えなくもない風体。へ〜と思ってみたり、なるほどなと思ってみたり。

東京都写真美術館では、1月29日まで、ホセ・ルイス・ゲリン監督の最新作「ミューズ・アカデミー/LA ACADEMIA DE LAS MUSAS」をはじめ、「シルビアのいる街で」など過去の作品を一挙公開中。ぜひご鑑賞ください!

★『ミューズ・アカデミー』
ホセ・ルイス・ゲリン監督特集上映「ミューズとゲリン」2017.1.7(土)〜1.29(日)

MoMA STORE

関連記事